「畳にカビが発生したのですが、どうしたらいいですか?」 という質問がたびたびよせられます。 厳密には畳全体に発生するのではなく、ほとんどのケースが畳表(天然イ草)に発生するもので、時期的には湿気の高い状態が続く6月~9月の時期が一般的だといえるでしょう。 また、畳表が新品の状態(1年~2年位)に発生・繁殖する傾向があります。

畳のカビ

カビの胞子(非常に小さく目で確認できない)が空気中から畳表に付着し、カビの発生条件を満たすことで畳表に繁殖します。この考え方は、風呂場や室内の壁紙クロスなども同じです。畳のカビは、初期段階でアオカビが多いのですが、空家や1ヶ月以上放置したお部屋などでは、クロカビ・アカカビなど様々なタイプを繁殖させます。

余談ですが、半年間位放置した新築物件で、高さが20cm位はえたカビの対処をしたことがあります。あの時は鳥肌が立ちました。

畳表のカビ発生要因

カビの発生条件は、ダニの繁殖条件とに似ています。条件として、温度・湿度・空気(酸素)・養分です。特に温度と湿度が重要な要素と考えます。温度(お部屋の場合は室温)が、20~30度で、湿度が75%以上で、この条件が継続的に続いた場合に畳表表面にカビが見える形でわかります。

天然イ草の畳表は、空気の吸収・放出を自然に行う性能があり、「空気中のホコリを吸収付着」「湿気を調節」する性質を持っています。当然これは日本の風土からすると快適なのですが、反面湿度が極端に継続する場合は、どんどん湿気を吸収してしまいます。新しい畳表ほどこの能力は高く、古く使われた畳表はイ草が潰れてこの機能が衰えています。よって新しい畳(畳表)ほどカビが発生・繁殖しやすいというわけです。
また、2階のお部屋ではカビ無いけど、1階和室が発生するケースがあります。2階は高温(32度以上)で湿気が低い条件であり、かわって1階は建物床下の湿気を含みやすい条件であると考えてください。

私たちの経験で、カビが多く発生した条件例やケースをあげてみます。

  • 昼間留守で和室を締め切っている。(共稼ぎなど)
  • 梅雨・夏季が多湿・高温な年である。(6月に湿気て、8月に夏日が続くなど)
  • 建物床下が湿気の要因を持っている。
  • お部屋の位置が風通し、日当たりが悪い。
  • お部屋にタンスなどが多く、室内の風通しが悪い。
  • コンクリートマンション系の建物で、締め切りが多い。
  • 新しい畳の上に何か敷物をしている。

カビの対処

軽いカビの発生(畳表面を触るとカビているのがわかる程度)

天気の良い日に窓を開ける。畳目に沿ってカビを掃除機で吸い取る。畳目にそって乾拭きをする。これを4回程度繰り返す。掃除機は、手で持ち上げてゆっくりとかける。掃除機のファンでカビの胞子が舞わないようになるべく気をつける。

重度な繁殖(5mm程度畳全面繁殖している)

天気の良い日に、畳を室外に出して掃除する。ホウキや掃除機、乾拭きを使う。3,4日ほど晴天の日に、畳を乾燥させる。この時畳表が日焼しないように、日陰干しか、畳表面を裏返すようにします。

畳を室外に出せない場合(タンスや荷物が移動できないなど)

畳店に相談してみる。費用がかかりますが、適切な対応をお願いできます。

カビが大量に発生して気持ち悪い

気持ち的な問題ですがすっきりするなら、表替えや新調の畳替えをしてもいいでしょう。また、カビが発生する要因の生活や建物の条件ならば、今後の事を考慮して「カビにくい」「ダニが発生しない」畳にしてもいいでしょう。

カビの対策

「カビの対処」の後、普段から気をつけておくことがあります。これによりその後の発生・繁殖を防止することができます。

年2回は大掃除
日々のお手入れ(掃除機でOK)はもちろんですが、年2回は「大掃除」すると良いです。畳だけでなく、「押入れ」や「タンス裏面」のチリやホコリを取り、風通りをしてください。
掃除機は持ち上げて
掃除機の排気で床面のホコリやカビの胞子が舞ってしまいますので、掃除機は手で持ち上げて使うと良いです。これはフローリングのお掃除でも同じ効果があります。
梅雨・夏季の風通し
カビは湿気を低くすることで防止できます。雨が降っていない日に風通しをしましょう。65%以内の湿度なら防止することができます。
※雨の日は窓を開けると、新しい畳ほど湿気を吸収してしまいます。
エアコンを使う
エアコンの除湿機能(ドライ)や除湿機など利用することでも、湿度を抑えることができます。
畳下面の防湿対策
1階和室の場合、建物床下からの湿気の要因のケースもあります。この場合畳下に防湿シートを敷くなどの対策もあります。畳や和室などの対策に限定されますが、畳店に相談してみるといいでしょう。

大きなことは、湿度を抑えることです。湿度をコントロールすることがカビの発生・繁殖を抑える有効手段といえるでしょう。

アルコールなどの消毒の効果は?

畳のカビは、消毒用アルコールでふき取る事でも効果があります。消毒用アルコールでゆっくりとカビをふき取り、その後硬く絞った水拭きをかける。その後、乾拭きで水分をふき取るか、扇風機などで乾燥させる。

この方法を上記などでお奨めしていないのは、消毒液の種類や分量、水拭きの状態などによっては、畳表の変色・痛みだけでなく、湿気によりダニを繁殖させてしまう場合もあります。また薬品の取り扱いの問題もあるでしょう。

私たちの経験で畳のカビ対策・防止は、「お掃除」「乾燥・風通し」で十分に効果があります。アルコール消毒は、その後ダメな場合に行う事を提案します。

酢による除菌

カビ発生後の除菌として、酢で拭き取る方法も効果があると言われています。私達でその効果を確認していませんが、効果があるようです。

酢を10倍程度薄めたもので水拭きをします。硬く絞った雑巾を軽くコスルように拭き取ってください。この拭き取り作業は、あくまで除菌であって、防菌ではありませんので、「問題がない新しい畳」には行わないでください。

また、この『酢を薄めた水拭き』は、古い畳表への”お手入れ方法”としても効果があります。『畳のお手入れ』に関しては、こちらもご覧ください。

近年の畳状況

昔の建物と違い現在の建築構造は、密封性・断熱性に優れています。これらが高いことで、エアコン・暖房生活が快適になっている現代ですが、一方ライフスタイルによっては、別の問題があるのも現実です。畳のダニやカビ問題もそのひとつといえるでしょう。

昔の建物や建築条件は通気性がよく、稲ワラ畳とも相性がよく、ダニやカビの問題は非常に少なく、それなりに快適だったのではないでしょうか。

しかし、ひとつ言える事は、現代の住まいに対応するように、畳もまた素材や原料も進化しています。一般標準が稲ワラ畳床でなく建材畳床(木質ボード主体)になったり、「天然イ草畳表の防カビ仕様」や「天然畳表に近い構造を持った樹脂素材畳表」などいろいろあり、ダニやカビの対策も可能な状況です。

日本の気候・風土、建物構造と建築素材、そしてライフスタイルを調和する畳が今もあります。

おわりに

ここに掲載している内容は、畳施工を行う私たちの経験からアドバイスさせていただいています。これらの情報を元にカビの対策を行う場合は、必ず自己責任でお願いいたします。

参考