国産畳いぐさ(藺草)の品種と畳表の評価についてのお話です。熊本県で生産されているイグサ品種について説明し、畳表の評価についても取り上げてみます。

熊本県生産いぐさの品種はいくつかあります

くまもと畳表

お米には、新潟産「コシヒカリ」秋田県「秋田こまち」そして最近人気の北海道「ゆめぴりか」など様々な品種があることはご存知かと思います。畳イグサにもいくつかの品種があり、熊本県で生産される品種だけでも複数存在します。先にも述べた通り日本国内において熊本県産が圧倒的なシェアであることから、熊本県産の主なイグサ品種を取り上げてみます。

まずイグサは、お米の種もみからの育苗と違って苗の株分けで行います。いぐさ生産農家は元苗を購入して苗を株分けを増やして生産しています。イグサ農家はこの苗(品種タイプ)をニーズや好みで選択しています。

熊本県でのイグサ品種は大きく分けて「在来種 (一般的には きよなみ のことをいいます)」「ひのみどり」「夕凪 (ゆうなぎ)」「ひのはるか」と言う品種があります。現代の一般流通している畳イグサ品種は、いぐさ生産の研究機関が幾多もの品種を人工交配をおこない、品質改良・研究しできた成果物です。熊本では「い業研究所」という熊本県の機関がイグサや野菜などの品種を開発をしています。このなかで優良な品種を生みだしイグサ株分けで生産農家へいぐさ苗を販売しています。

熊本県でのイグサ品種は、品種の外部(例えば中国などの国外)へ持ち出しすることを禁止しています。これは品種毎に生産農家が契約して栽培許可をいただいているとのことです。

また熊本県い業研究所はイグサ品種の改良育成や栽培増殖だけでなく、優良な品種の保存という実務をおこなっています。これはその年の気候変動により種苗が全滅しても大丈夫なように保険をかけているようです。多分、地震や津波などの震災や災害でも大丈夫なところで保管されていると思われます。熊本は阿蘇山という活火山がありますからね。


畳イグサ(藺草)の品種

いぐさ苗

熊本県で生産されている畳いぐさの品種を説明します。

在来種

40年以上前は「岡山3号」という品種が主流で在来種のメインでありましたが、現在では「在来種 = きよなみ」と認識しています。在来種(きよなみ)は草の根元が太くて丸いイグサで、織り込むと厚手なしっかりとした畳表になります。「ひのみどり」に比べて粗雑な見栄えに感じますが、日焼けした表面が綺麗で丈夫なのが特徴です。

ひのみどり(有明3号)

「ひのみどり」はここ15年位前にでてきた品種で、熊本県産イグサのメイン品種であり、今流通している物は3世代〜4世代目の苗だと聞いています。特徴として草が細くて、穂先が茶の用に枯れたような色がでてきません。色合いは在来品種に比べて青々した色合いとなります。ただ在来種と比べて草表面の質が弱く、日焼けや擦り切れが弱い性質です。

生産面から見ると「ひのみどり」は高品質の畳表が生産できる半面、苗床で枯れやすいという性質があり、生産農家は苦労していると聞きます。また茎が細いために、いぐさ織り工程で生産時間がかかるなどの弱点もあります。

「ひのみどり」の品種で草が長く畳表の織り込み量(これを打ち込みと呼びます)が多い高品質なものは、「ひのさらさ」 「ひのさくら」「ひのさやか」という特別に選定された畳表として呼ばれています。これは熊本県い業協同組合が認定した物で、畳表端側にスタンプまたはシールの証明が添付してあります。

夕凪 ゆうなぎ(有明5号)

このイグサ品種「夕凪」は、平成19年に登録された品種で、沖縄のイ草の遺伝子が入っている玄人受けの良い畳表です。

「ひのみどり」品種はとても綺麗なのですが、2,3年経過の耐久性や色焼けに少し評価が落ちる点がありますが、この夕凪は草が太く固くて丈夫なイグサです。日焼けも綺麗で、表面が丈夫な点など在来種を上回ります。印象としてガッチリしている感じです。

夕凪で草が細い物があります。これは丈夫な上に細くて綺麗だと産地での話では高く評価されています。

ひのはるか(有明6号)

「ひのはるか」は、こちらも平成19年に登録された新しい品種です。このイグサは長い綺麗な草で、ひのみどりの用に柔らかい感触をもっています。「ひのみどり」の良い所を継承した品種改良なのでしょう。綺麗な面に行きすぎると質が弱くなるのでバランスとれた栽培が必要とされるのではないでしょうか?

涼風 すずかぜ(有明7号)

平成24年に発表された「ひのみどり」をベースとした新しい品種です。

涼風は苗の枯死率が低く、茎が太いというタイプです。「ひのみどり」と茎が太い品種「沖縄太い」遺伝子を人工交配したものです。涼風は茎の太さが平均1.3mmで、「ひのみどり」平均1.5mmと比べて太く、収穫量も2割程度増すという話です。枯死率の試験栽培でも「ひのみどり」の12%から1%と大きく改善した結果がでています。

「涼風」という新品種は、「蒸し暑い夏を畳で難なく乗り切る」「厳しい逆境をさらりと過ごせるように」という意味あいを込めて「涼風」と名付けたそうです。

新種の畳表なので、当店では残念ながら取り扱ったことがありません。畳表の評価は納品施行した後数年かかるので、しばらく様子見状態といった所です。


いぐさ畳表の評価

いぐさ生産農家

いぐさ畳表の品質は、イグサ品種のみで区分けされていません。いぐさを泥染めする染土(せんど)にも複数のタイプがあり、この染土により色みや艶が違いますし、生産農家の土壌によるイグサの長さや太さなど様々な品質が流通しています。

やはり生産農家によっての「出来栄え」は大きな影響があります。毎年ある「イグサ畳表の品評会」にて毎年受賞される農家はある程度同じ方であったり、優良な農家の畳表は毎年高品質な出来栄えであるなど、農家さんの栽培管理の技量が大きな要素といえるでしょう。

このようなことから品種はあくまで評価の参考基準であり、品質や等級そのものではありません。ブランドといえばブランドなのかもしれませんが、当店でもイグサ畳表を仕入れる要素として、品種はあくまで参考として考慮し、品質を前提として評価し仕入購買しています。お客様もxxx産やxxx品種(xxx号)など気にされず、畳店と相談しつつ納得のいくイグサ表を選別頂くのが望ましいと考えます。

いぐさ泥染め
補足
よくお客様から「新しい畳の香りが気持ち良いですね」とお声をいただきます。畳の青々しい香りは、イグサとイグサを泥染めした染土(せんど)の香りで、イグサ単体の匂いではありません。